true of yours

 

 

 

 

 

 

 

 

甘い吐息、一つに重なった鼓動。
通り雨が去った静かな部屋に淑やかに響く。

 

 


優しく触れた唇は次第に熱を増し、
背に回した腕は互いを確認するかのように強く己に引き寄せる。
離れていた時間も距離も飛び越えて2つの想いが1つになる。

 

 


ゆっくりと、惜しむように唇を離して二人見つめ合う。
離しても尚、微かに感じる唇の震えに紀世子は羞恥を隠すようにノウェムの胸に頬を押し当てた。

 

 

 

 

 

「ごめんね・・・」
「どうして謝るの?」
「私、貴方にひどい事言ったわ。貴方を拒絶してイヤな態度とってた。
なのに貴方は優しくしてくれる。初めて会った時みたい・・・。
・・・初めて会った時からずっとだったのよね。」
「優しいのは君の方だよ。僕の事看病してくれて、さっきのピアノだって君のおかげで生き返った。」
ノウェムの手が優しく紀世子の髪を撫でる。

 

「私、本当は寂しかったの。」
「うん・・・」

 

「父さんがいなくて、母さんもあんなで。誰も助けてくれない。
竜也と2人でこの先どうしたらいいんだろうって、ずっと出口の無い迷路に迷い込んでるみたいだった。」

ノウェムに躰を預け辛い日々を思い出すように紀世子が言う。

「それでもここまで生きて来れたのは竜也がいたから。
この子は私が守らなきゃって、私が居なきゃこの子は死んでしまうってそう思ってずっと必死に生きてきた。」

「いいお姉さんだったんだね。竜也君もきっと感謝してるよ。」

ノウェムの言葉に紀世子は静かに首を振った。
「でも本当はそうじゃなかった。ただ自分が寂しかっただけ。
自分という存在を必要としてくれる存在が私の生きていく支えだったの。
けれど、その竜也も私とは違う意志を持って遠くに行ってしまった。私の手の届かない世界に。
ううん、最初から分かってたのかもしれない。いつかはこうなる日が来るって。
だからずっと寂しかったのかもしれない。」
「・・・・・・・」
「私が今までやってきた事って何だったんだろう、って思ったらもっともっと寂しくなって。
それで貴方達が余計憎らしくなったわ。」
「え・・・」
「だって貴方達はずっと父さんと居たんだもの。私達を捨てても父さんには貴方達が必要だった。」

キュっとノウェムの服を掴む手に力が込めらる。紀世子はいぜん俯いたままで。
ノウェムも何も言わない。ただ優しく抱きしめるだけだった。

 





「君に黙っていた事がある。」
「何?」
沈黙は破られ、紀世子はふっと顔を上げてノウェムを見つめた。
「僕は君を知っていた。ここで出会うよりずっと前からね。」
「え・・・?」
「先生から君たち姉弟の事は伺っていたんだ。先生は君たちを捨てたんじゃない。ずっと会いたがっていた。
そして僕は・・・偶然君を見かけた。」
「・・・何処で?」
「何時だったか、真っ白な雪原の中、女の子がしゃがんで一生懸命何かやってたんだ。
しばらく様子を見ていたらその子は雪でウサギを作ってた。」
「あ・・・」
「そして小さな男の子が現れて2人楽しそうに雪原を駆け回っていたよ。」
「それって竜也と私?」
「竜也君は先生にそっくりだったからすぐに分かった。」

「とても幸せそうだった。2人ともまるで天使のようで。
家の複雑な事情とか、そんな陰りも感じさせない明るい笑顔だった。」
「・・・・・・・・・」

「でもその後、竜也君は家に帰ったのに君はしばらく外でずっと雪でウサギを作ってたね。」
「帰りたくなかったのよ、あんな家。」
「泣きながら、何個も何個もウサギを作ってた・・・」

 

「だって仕方ないじゃない。竜也の前では泣くわけにはいかなかった。」
「お姉さんとは言え君だって幼かったのに・・・強い子だって思ったよ。
本当は辛いのに気丈に振る舞って、笑顔を見せて。」

「その後も君たち姉弟の事が気になって何度か見に行ったんだ。
先生から時期が来るまでは絶対接触しないようにと言われてたから何もしてあげられなかったけれど。」

「そうだったの。。。」
「竜也君があんな風に真っ直ぐに育ったのは君のおかげだよ。
君がちゃんと前を向いて竜也君を導いてきたから。無駄な事なんて何もない、ちゃんと未来に繋がってるんだ。」

 

 

どうりで。
彼が自分達を見る目は他のギルガメッシュとは何処か違う気がしていた。
ふと見せた柔らかい笑顔はその時だけの自分へじゃない、
その時までを生きてきた自分に向けられたものだった。

知ってたんだ、もうずっと前から。。。

でも・・・

 

 

「嘘。」
「え?」
「私、今でも不思議に思ってる事があるの。その時は小さかったから深くは考えてなかったけれど。」
「何?」
「あの時・・・ウサギを何個も何個も作って・・・それに飽きて私、雪だるまを作ったの。
顔に付けるものを探しに少しその場を離れて戻ったら・・・雪だるまがマフラーと手袋をしてた。」
「・・・」
「あれは貴方だったの?」


「・・・君がとても寒そうだったから。」
「そう、貴方だったのね・・・。あの時は一瞬、父さんが帰ってきたのかと思った。」


「僕は余計な事をしたのかな。」
「ううん。父さんじゃくてもあれはきっと雪の妖精のプレゼントなんだって思ってた。」
「妖精か。いいね、それ。」
「貴方はギルガメッシュ・・・なのに人間より暖かな心を持ってるのね。」
「人間より、か・・・」

 

「あ!」
「何?」

「嘘はないって言ったくせに。嘘つきね。
私の事を知ってた事も、何もしてあげられなかったと言った事も。」
「・・・黙ってただけだよ。それにあれくらい、何かしたうちに入らない。」
「何それ。屁理屈。」
紀世子の顔に思わず笑みがこぼれた。

「あ・・・」
「何?」
「初めて笑った。僕の前で。」
「えっ」

 

思わずこぼれた笑み。それは本物の微笑み。
無意識の行為に紀世子自身も戸惑い、頬を赤らめる。

 

 


「君は笑っていて。もう強がらないで、本当の君を見せて。」

 

 

 

 

そう言ってノウェムは紀世子の火照った頬に手を添えると再びキスをした。


 

 





 

FIN

 

 






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18話放送前のひとり妄想です。
このあとウラになだれ込むってどうですかね(笑)
2階にあると思われる寝室にお姫様抱っこで紀世子さんを運んでってください<コラ

17話捏造というか、思いっきり過去捏造ですι
なんかノウェムのアレは父性愛に近い気がして。
紀世子に執着してたのも昔から知ってたんじゃないかな〜と思ってこのような話になりました。
足長オジさんかいι

雪ウサギのシーン、あの子たち素手で雪投げっこしてたのよね。冷たそう〜っ

TV感想やキャラ評では思いっきりギャグにしてるノウェムさんですけど、
小説にするとどうも優男に・・・ι
私が書くとどのジャンルでも甘&優男になるようですι
あまり地の文が無いですが、そのへんは17話のノウェキヨシーンの雰囲気を感じてもらえれば…と思います。

 

2004.1.30